四季報/芹沢文学研究会・会報 秋号
20013年10月 No 87
2013年10月28日発行
秋の歌
我入道に 集ひて共に文学を 語る喜び・・・「和楽」の時ぞ
◎第25回 「我入道の集い」
※芹沢光治良文学愛好会主催 /10月13日〜14日に
毎年の秋に、伊豆湯が島温泉と我入道を会場にして、10月13日(日)〜14日祝日の一泊二日で行われました。13日の14時に伊豆箱根鉄道駿豆線の修善寺駅前に集いました。駅が工事中で、高速で事故があり、遅れた人もありました。湯ケ島温泉のいろりの宿「三
吉」に着き、受付・散歩・入浴を済ませて、6時から夕食をいただきながらの懇親会が大宴会場で持たれました。私小串は自己紹介と「比較読書」の必要性を語りました。いろりのある会場で、私が選ぶ「色紙文3選」の発表が指名で行われました。鈴木春雄さんが多
くの色紙を収録して作成した小冊子が、予め郵送されていて、葉書にベスト3を選んで坂送していました。集計していましたが、その結果は伏せて、全員に発表してもらいました。選んだ理由や印象を聴くのは楽しいものでした。夜遅くまで文学について語りました。
14日には、車に乗り合わせて沼津市民文化センターに移動して、10時30分から12時の文芸講演会で「大河小説『人間の運命』 (全16巻)緒論」と題して小串が講演をしました。森家・石田家・有田家・大塚家を中心に特異な登場人物のことなとも詳しく語りました。
昼食の後に13時から読書会が3会場に分かれて・短編小説「対面」について討論しました。この作品はNHKテレビ「私の秘密」(高橋圭三)に出たことの体験を踏まえて、主人公を画家にして娘が5人もいる家庭として描いています。エリートコースから役人を退職しフランスに留学して画家になった田坂新吾は戦火で家を失い、農地も取られてしまったが絵を売らず挿絵なども描かずに収入が無い。娘達に馬鹿にされている。代用教員の時の教え子の再会の対面でした。様々な読み方があるのがわかりました。17時からは夕食の弁当を食べながら懇親会もありました。
「我入道の集い」なのに、沼津市の方々が余り参加していないのが残念でした。交流会にしたいものですね。
☆大河小説『人間の運命』は出たけれど三…
芹沢先生没後20年を記念して勉誠出版から、大河小説『人間の運命』が9月までに全18巻で刊行されました。芹沢先生が校訂したもので、 『人間の運命』が全16巻で刊行されたのは画期的で、このような大事業に取り組まれた勉誠出版に意を表します。
しかし、@慌てて刊したたでめか、校訂や校正が不十分。A構成としては、題に「17」「18」は入れるベきでなかったし、 「1」に序章、「16」に終章は入れて欲しかった。B多くのルビが除かれた。C語注が中途半端。D表紙に全て富士山の写真が使われたのは平凡過ぎる(今年、富士山が世界文化遺産に登録されたので良しとする)E「16」は校訂されていなくて昭和47年の単行本を底本にし仁、同49年の作品集のものを底本にすべきであった。例ジュウベがジュベに。F別巻が2巻付けられたが、別巻を付けるなら、四年半の空白の自伝的作品『孤絶』 『離愁』 『故国』と関'連資料をこそ収録すべきであったと残念でした。どうぞ全巻を購入してあげてほしいと思います。
対談「小説の運命はそろそろ終わりなのか」 (芹沢光治良・池島信平 昭和44年5月9日対談) 出典 『文学よもやま話』平成7年12月恒文社発行。
*これは、昭和49年に文芸春秋社から刊行された本の再販、中公文庫でも刊行。*野上弥生子のこと等が語られています。
◎「会員便り」※二巡目の会員便りです。
▽便りが届かなかったので、小串が代わりに書きます。
ジャック・ルクリュ
大分県大分市法勝台 小串 信正
二つの台風が過ぎて、やっと秋らしくなりましたが、皆様はお元気にお過ごしのことと思います。
芹沢先生は、パリに留学した時に、石川三四郎の紹介で、アナーキストのルクリュ家の人々と親しく交流しています。ポールの息子ジャックと後に夫婦となるコルネリッサン夫人のことは、 『愛と知と悲しみと』に書かれています。パリのルクリュ家で出会った作家巴金との日本での再会で約束した作品で、芹沢文学の代表作の一つです。勉誠出版の別巻lとしても刊行されましたので、一読や再読をお勧めします。 夫人をパリに残して、
ジャックが招聴されて赴任した中国の大学名が「上海港湾労働大学」であったことが判明しました。
アナーキスト系の特異な大学であったようです。
芹沢先生は、若き日からアナーキストの思想に惹かれて、芹沢文学にも大きな影響を受けました。日本では「無政府主義」と訳され、テロリストのように思っている人が多いのですが、穏健なアナーキストもあるのです。私は「主体的自由主義」と訳しています。読書の秋に芹沢文学を再読下さい。
☆『超克』芹沢光治良はロシアでどう読まれたか
*芹沢光治良著「神についての三部作」関連書出版*
2002年に芹沢文学のロシア語訳『巴里に死す』
(男の生涯・巴里に死す・南寺・死者との対話・秘蹟)がイノストランカ社より出版されました。そして、6年後の2008年7月に「神についての三部作」とし
最晩年の運作がロシア語訳されて、イノストランカ社から出版されました。この中に収録された出版記念論文・各巻序文・書評にはしがき(鍋島慶次郎)・跋文(芹沢文子)も収録された『超克』が出版されました。
二つのロシア語訳に尽力された鍋島慶次郎氏の編集ですが、鍋島氏が昨年の2月18日に急逝されたので、鍋島素子氏[横浜市)が三光舎の補助を受けて出版したのです。四六版、179頁。
タチアーナ・グリゴーリエバ著『超克』は、谷寿美訳、ワレンチーナ・デイニチェンコ作「芹沢-聞こえた人」は、佐藤祥子訳。 「神についての三部作 各巻序文」は、野乃宮紀子著です。貴重な単行本と言えます。
出版記念論文『超克』は、本格的な論文で、ロシアで芹沢文学がどのように評価されているか知られます。
「はしがき」に「二部作」三巻・一万五千冊は、その月のうちに完売されたとのこと。先駆的な翻訳です。
☆編集後記★ 編集責任 小串信正
会報No87(秋号)をお届けします。10月13・14日の「我入道の集い」で上京し、再会出来ましたことを嬉しく思います。沼津市で講演したことも喜びです。
◇刊行芹沢文学研究会
〒870-0171大分県大分市
事務局 小串信正