新学期が始まりました。新しい環境で、期待に胸振るわせている人も多いことでしょう。『人間の運命』の森次郎も中学入学の時、 一高入学の時、大きな感銘を受け、入学したと思います。
森次郎が高校に入学して、今年は92年の歳月がたっています。今高校入学の現状は進学率の増加と共に、五月の連休が過ぎると 「なぜ高校に入学したか」という動機を忘れて、一見怠惰な生活を送る生徒も出てくるのが現実です。そんなとき私は、授業の中で 『NHKスペシャルこども輝けいのち』を見せて、人について考える授業をします。
このNHK特集番組は、
東京聖路加病院の小児科病棟で家族と別れ、つらい治療を受けるこどもたちの心のふれあいを、
温かいまなざしで見守った番組です。この番組の登場する小学校に入学する前の5歳素平君と司君が優しく思いやり、
闘病生活する姿は、五月病といわれる高校生に新鮮な感動を起こします。高校生達は、高校で勉強できる幸せ、
生きていく幸せを感じ入っているようです。
星になった素平君が病室に貼ったシールを素平君は、退院するときにそのままにして司君はお父さんに抱かれ病室を後にして、 小学校に通います。このシーンが印象的に二人の物語は終わります。
ところで、今年の3月14日(金)朝日新聞の夕刊の『人・脈・記』で、 この番組に出ていた東京聖路加病院の小児科病棟部長の細谷亮太氏が特集されていて、興味深く読みました。
この記事の中で、
治らない子もいる。「直せなくてごめんね。」「死んじゃうの?」「・・・人間はみんな死ぬんだよ。 先生も帰りに事故で死ぬかもしれない。でも、いますぐ死ぬわけじゃない。あした、お天気になったら、公園にいってみよっか」
子どもの方がよほど話しをまっすぐに受けとってくれる。いま6歳以上に知らせている。
そして、素平くんと司くんについてふれていました。
病室で友情もめばえる。がんで失明した素平くんと骨折で入院した司くん。ともに5歳。 「素平くんがゲボがでて大変なとき、看護婦さんを呼んであげないと」(管理人注:番組では、 司くんはそのため夜遅くまで起きていようとしていた)そう気づかった司くんの外泊中、素平くんは逝く。 彼が窓に張ったミニーマウスのシールは、5年後の今もそこにある。
この番組に出てくる幼い子ども達は、足の切断、失明、多くの喪失のすえ息絶える。先生は、 さよならした200人の名簿をリュックに03年から毎年、四国のお遍路に。山中、風が吹くと子どもたちの笑い声が聞こえる。おっ、きたなぁ。 うれしくなる。
芹沢光治良の『人間の意思』で
しいて、親神の声を求めれば、「風」こそ親神の声だと、最近知った。 それほど親神は広大無辺の実在ー大自然だった。「風」だけが親神の声、息だった。そう解ってから、風に注意すると、 無限の興味が湧くばかりでなく、多くのことを教えられる。どうか、心で風を聞いてもらいたいものだ。
と書かれています。
きっと、東京聖路加病院の小児科病棟部長の細谷亮太氏は、このような哀しみの中でも、『人間の意思』 に書かれているように「この仕事を一生の使命として与えたのだと悟って、仕事に精進して、使命を果たすように、覚悟」した結果、「風」 のなかに子どもたちの笑い声が聞こえるのだろう。
人間というのは、本来幸せになるために生きていると思います。 生活をしていて幸せになるといわれても実際は違うのではないかという反論も聞こえてきます。
しかし、細谷氏の風が吹くと笑い声が聞こえ、「おっ、きたなぁ。うれしくなる。」という先生の姿は、 「親神にすべて引き受けてもらって、喜んで日常生活を送ればいいのだ」(『人間の意思』)につながるような気がします。