「近代文学に於ける芹沢光治良」という演題で芹沢光治良を立志の文学と位置づけた羽鳥先生の話しを聞いていて『人間の運命』 はその主要な芹沢作品と思われます。
主人公の森次郎が高等文官試験を受ける事を書かれています。 貧窮の身から志を持って高等文官試験を受けるようになったのはある意味で立志の一つの表れですが(しかしここではおわらない)、 本人はこの辺の事情はどうはなしているのでしょうか?
私(芹沢光治良)が東京帝大の三年生に進学した時、(大正10年春)在学中に高等文官試験や外交官試験を受験する同級生は、 みな10月まで欠席することにして、誘いあって、田舎で共同勉強する習慣だった。
私も仲間に加わりたかったが、費用がかかりすぎるので、不可能だった。旧制一高時代からの親友Kも、私と同じ境遇だったので、 二人で、東京の下宿代ぐらいで、共同勉強を出来るところを、故郷で探そうと、沼津へ出かけたところ、列車で中学の5,6年先輩で、 顔見知りの近藤氏に会った。近藤氏はそれならわが家はどうかと、沼津駅からすぐに案内した。
(続く)